ヘヴィーンボーブがやってきた
モンゴルのお正月で私が毎年気になるもの、それはヘヴィーンボーブ Хэвийн боовです。
ツァガーンサル цагаан сарのお祝いになくてはならない、日本で言えば鏡餅のようなものなのですが。大型のクッキーを井桁に組み、最低3段以上の奇数段を積み上げます。上に蓋のような丸いクッキーをのせて、上からアーロール ааруул などのモンゴルの乳製品と氷砂糖やキャンディなどをバラバラと振りかけて飾ります。
こんなものです。
これは今年の、モンゴル語教室「ノタック」の日本での新年会のものなので、やや簡略なのかもしれません。
数年前、ツァガーンサルのお祝い会をする前に、モンゴル語の先生が「ヘヴィーンボーブがないんですよ。困ったわ。日本で手に入らないかしら?」と、ヤキモキしていました。モンゴル語の聞き取りもイマイチな私は、えっ?ヘブンボーブ?つまり天国ってこと?と思いましたが、そんな訳はなく…。
ヘヴ хэвは、鋳型という意味。鋳型にいれて形を作ったボーブですと。ひとつひとつはこのような形(大きいのがヘヴィーンボーブです。丸いのはまた別のボーブ)。ちなみに、このхэвという単語、派生語も多いから、覚えて損はなさそうですよ。
お菓子に話を戻しますと、これはだいたい長さ20センチくらいです。6個で1パックになっていました。オーブンで焼くのかと思いきや、油で揚げるのだそうです。それは大変!ですが、モンゴルの伝統的なライフスタイル、ゲル гэрに住んで遊牧というスタイルには、オーブンは似合いません。
ボーブбоовは、クッキーとか焼き菓子のこと。普段からよくおやつにいただくのは、油で揚げたドーナツとかりんとうの中間くらいの、ふた口サイズくらいのお菓子です。辞書によると、揚げパンはボールツォグ боорцогと言うのらしいのですが、ボーブでも通じています。
このヘヴィーンボーブ、日本では作っても、売ってもいないようで、それぞれがツテをたどって、モンゴルから送ってもらったり、持ってきてもらったりしているよう。そして、上の蓋の丸いボーブは、さらに手に入りにくいのか、知り合いで持っている人から貸してもらったりもしているみたい。
想像してみてください。ツァガーンサルが近づくと、数多くのヘヴィーンボーブが、モンゴルから海を渡り空を飛び、世界の国々へ人づてで届けられていると思うと、かなり楽しい気持ちになります。
ツァガーンサルの後、お役目を終えたヘヴィーンボーブはガジガジと食べていいようですよ。でもかなり硬くなっているので、スーテーツァイ сүүтэй цайに浸してね。薄甘くて、懐かしい味がします。