モンゴル5%ライフ

普通に日本に暮らしていながらモンゴルがじわっと染みてきています。モンゴルに興味のある方に役立つ、ちょこっと情報がお届けできればうれしいです。

英語じゃない言葉を学ぶ訳

久しぶりの長めな文章書きです。ゴールデンウィークでもあり、ゆっくりと書きました。

モンゴル語を勉強していると「どうしてまた?」と聞かれます。たぶん、ベトナム語を勉強してますとか、オランダ語を、と言っても同じかなと思います。

この数年、インターネットとSNSにより、コミュニケーションの道具として学ぶべき外国語は英語一択にまとまりつつある気がしています。旅行に行くためでも、多少は素地ごある英語をやりなおした方が早そうな。

まあ人生何が起こるか分からないとはいえ、これから留学して学者になることも、モンゴルビジネスに打って出ることもなさそうです。一生懸命教えてくださる先生には申し訳ないのですが、私が流暢にモンゴル語を話せる日も今のところは、遠い気もします。

そんなら、なんでやってるの?不思議ですか?でも、それなりにちゃんと意味があるんです。

 

1.すばらしい脳トレになる

これ、ほんとにやって、体感してみてください。レッスンでは反射的にキリル文字を見て音読して、同時に意味を考えて、先生の質問を聞き取り、その意味と答えを検討しつつ口に出し。脳の何ヶ所もを同時に使うことて、短時間でも脳はフル回転。頭から湯気が出る感じ。それで時々、考えなくても単語が反射的に出てくると、おっ、私の脳もなかなかやるなーとうれしくなります。

脳科学者の黒川伊保子さんの著書『成熟脳』でも、50代からの手習いは、成果を求めず繰り返すことを目標にするのがいいと、外国語学習を楽しみ、忘れることや失敗を楽しむことをすすめていますが、レッスンは忘れては思い出しの連続で、まさにコレ!という感じです。

英語でもいいのかもしれませんが、日本人の脳はなんやかんや言っても英語に慣れているんです。ここは英語以外の言葉をぜひ。

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黒川伊保子さんの「成熟脳」。脳の本番は56歳から、という、なんとも励まされる脳科学エッセイ

 

2.世界の広さと小ささが染みてくる

普通、日本人はモンゴルの歴史や地理などは、知らないのが普通ですよね。私も正直、モンゴルという国があることさえ、よく分かっていませんでした。

では、モンゴルを知るために歴史から勉強しましょう!というのでもいいんですが、アカデミックに勉強しなくても、少しだけその国の言葉を学ぶだけで、普通の人としては十分に面白い発見がたくさんありました。

「これは元々チベット語なんですよ」といわれれば、チベットとモンゴルにどんな関係があるの?と少しずつ聞いてみたり、山と蔵は同じ語源で、それがお詫びの言葉に繋がっているとか、店員さんと嘘の語源が一緒とか聞くと、その民族ならではの感覚の微妙さを思い巡らせたりとか。

小さなひとつひとつのことを「へー」と聴きながら、じんわりと自分とは異なる民族と歴史を感じていきます。それは西洋と中国の、だれが歴史の中心人物だったか?という話でいっぱいいっぱいの世界史の授業にはなかった、新鮮な視点です。

こんな風に語源や言葉の成り立ちを知るうちに、「世界は広いなあ、人も歴史もいろいろだなあ。でも人間同士、不思議と同じ感覚も持ってるなあ」という、今の時代に大事にしたい感覚が、じわーっと染みてくる気が。この「染みる感じ」は、英語がペラペラになるのと同じくらいの価値があるような気がしています。

 

3.日本語についても「分かる」ことがある

自分のことは何か対比するものが多くあってこそ分かってくるもの。今まで外国語といえば英語だったのが、そこにもう一つの言葉が加わることで、「あれ?」という発見が多発します。

例えば日本語にない母音を試行錯誤するうちに、日本語の母音は5つと思っていたのに、「お」といっても「大阪」の「お」と「顔」の「お」は、違う音かも!?と気づくとか。私は実は日本語を知らなかった!とモンゴル語を学びながら実感しています。

「知る」ということもうれしいけど、「分かる」という、あの頭にパッと光が灯る感じって、うれしいですよね。特に人生後半になっても、少しずつでもなにかを分かるうれしさを感じたいなら、小さな言葉を学ぶのは、けっこう良い選択だと思っています。愛読書のひとつ「みちこさん英語をやりなおす」の中で、とても素敵な言葉が引用されています。

日々の暮らしの中で、幸せではなく、うれしさならあると思う。

「世界を、こんな風に見てごらん」(日高敏隆著)

幸せという大きなものが分からなくなったとしても、うれしさを集めていけば、どうにかなりそう。その種のひとつとして、言葉の勉強はありそうです。

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「みちこさん英語をやりなおす」(益田ミリ)。英語が苦手だったみちこさんが「もうわかったふりはしない」と時間をかけて英語をやりなおす。深く勇気の出る語学マンガです。

 

で、最後に、なぜベトナム語でも、オランダ語でもなくてモンゴル語なの?と、言われると。こればっかりは、出会いと好みだと言うしかないんですよ。私はモンゴル語のおしゃべりの音の感じと、キリル文字の形が好きでした。好きな理由は…恋愛と同じようなものとしか、説明も解説もできません。

こんなに長々と書いて、その結論ですか!?と言われると、なかなか辛いのですが。

せっかく、普通の人が世界中に旅することができる時代です。人がそれぞれに旅に出て、小さな言葉と出会い、恋に落ちて、世界がいろいろで良かったなと感じる、そのような時代が長く静かに続くことを、万年モンゴル語初心者はひっそり東京の片隅で願っています。

 

★たまに、外部記憶装置的ブログも書いてます

http://keshikiko.hatenablog.com/